2010年05月05日

知っていても知らんぷり

「すみません。この間はうっかり失礼なことを言いました」

「…?」

その若いバーテンダ-の詫びの言葉に思い当たる節がなかった。

「この間、お連れさんといらっしゃった時、ついうっかり『先程はどうも』と言ってしまったのです」

「あぁ、そんなこと」と思いつつ、その若いバーテンダ-の律儀さに感心した。

その日の夕方、行きつけのバーで彼に会っていた。私は一人だった。

二言三言言葉を交わし、彼は自分の店の準備で先にそのバーを出た。

その夜、女友達と約束があり、何軒か飲み歩き、ふと思いついて彼のバーに立ち寄った。

その時、「先程はどうも事件」があったらしい。

私が女連れだったので、彼は自分の言葉を失言と考えたのだろう。


酒場での会話は微妙だ。

誰それと誰それがどこそこで一緒に飲んでいたとか、こんな話をしていたとか、軽々しく口にすものではない。特に店の人間のおしゃべりは御法度だ。

「知っていても、知らんぷりする」のが酒場の礼儀。

彼はその禁を犯したと考えたのだろうが、彼の神経の細やかさに感心もし好感すら覚えた。

ちょっとした言葉の綾が人の心を動かすものだ。



Posted by Ric. at 09:06│Comments(3)
この記事へのコメント
バーテンってなんかいいなぁ・・・と思います
無口でポーカーフェイスなところが魅力です
が・・・つぃその目の奥を見てしまう意地悪じょっぷです
Posted by じょっぷ at 2010年05月07日 01:39
それでいいのです!

ポーカーフェイスで虚飾の仮面をやんわりひっぺがすことに快感を覚える意地悪なRic.なのです(^^)
Posted by Ric. at 2010年05月07日 02:00
;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブッ

てことは・・・・Ric.さんと私が揃えば・・・

バーテンさん泣いちゃいます゚.+:。゙d(・ω・*)ネッ゚.+:www
Posted by じょっぷ at 2010年05月07日 09:44
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