2010年08月31日

母の闘い

「なんでこんな情けないことになったんや!」

母は手に持った包丁をまな板の上に叩きつけ怒りを露にした。

少し言い過ぎたか…。

痴呆症による母の支離滅裂な行動の一部始終を話して聞かせたのは、余計なことだったかも知れない。

母の「物語」に相槌を打ち調子を合わすことの方が母の気持ちは乱れないのだろうが、それが出来ない。

なぜなら僕の中に恐怖感があるからだ。

母の物語に追従していくと母は更に向こう岸に流されて、帰って来れないんじゃないかという恐怖感。

少しでも母の意識を
「現在」という水辺近くに引き留めておきたいと思うあまり、

母には現実を示す、負担を強いる言葉をついつい吐いてしまう。

母の世界を受容する心の広さと忍耐に欠けていると痛感する。

僕の闘いなどたかが知れている。

母は今、心の闇と必死で闘っているのだ。



Posted by Ric. at 04:25│Comments(0)
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