この日、この空、この私

携帯の電話帳を整理した。


一時期頻繁に行き来した人や店も、

いつの間にか疎遠な間柄になっていることがある。


そのまま残しておいてもいいようなものだが、

記憶から遠ざけたいものもある。新陳代謝も必要だ。


脳波が曲線を描くが如く身の内で生き続けていたその人の声や姿形が、

「削除」ｷｰを押した瞬間、

あたかも脳波がそれまでの動きを止めるように、

永遠に目の前から消え去ったような、寂寞とした気持ちに囚われる。


長い人生、再会の機会があるのかどうかは分からないが、

ｸﾘｯｸと同時に、

それまで我が内に在った諸々は、

遠くなりにけり。